<ティノ・サッキさんから、日本の皆様へのご挨拶を兼ねた写真です。設計図と一緒に撮影>
数年前から話題だったタルガツイン(2気筒)エンジン、イタリアに於けるランブレッタの第一人者(この表現が一番かと思います)ティノ・サッキ(Tino Sacchi)さんから当方向けの卸価格等々連絡が届きました。当方にて日本へ供給できます。「タルガツインっていったいどんなエンジンなんだろ?」と興味深々だった方も沢山いらっしゃるかと思います。価格は単純に言えば高価ですが、国内の専門店でRBやRapidoの250ccをオーダーメイドで購入される場合の費用と大差無いかと思います。(価格のみで判断されることは極力避けたいので、あえて価格はご提示しません。お問い合わせ下さい)レーシングエンジン並に全てのパーツがごく少量生産され、高品質パーツの集合体で組み上げられていることを考えると、ある意味安価かもしれません。価値あるエンジンです。以下にその要点をまとめて行きます。
A.イントロダクション
1967年の最高位バージョンへツインエンジンを搭載するという発案が経営陣から出され、試作およびテストで数基造られ、いくつかは関係者を通じて販売されたとも言われておりますが、定かではございません。ボアXストローク 50X50 のツインエンジンで当初は200ccモデルとして想定されていたそうです。どうしてもパワーや速度に目が向いてしまいますが、実際の狙いはレーサーのような鋭角的な浮世離れしたエンジンではなく、より高グレードの高出力エンジンを狙ってとの事だったそうです。この200ccの試作エンジンにより当時の計測レベルでは126km/hを記録したとのお話ですが、それ以上に興味の対象となるのが、2ストロークエンジンの鋭角的なパワー発生特性を、ツインエンジンとすることにより、トルク感のあるパワフルな特性にすると言ったことに重きを置いていたようです。
当時量産されずに終わった理由は「あくまでもコスト」と言われています。併せてサッキさんの説明も同じくそうでした。加えてどうしても時代背景的にこのような過度とも言えるメカニカルなエンジンが受け入れられる市場も極端に少なかったともいえます。また、シリンダーはスチール製とアルミ製と2種試作されたようですが、私が英国人からかつて聞いた話は、各シリンダーの接点に於ける過熱を冷却し切れなかった為・・と聞いています。給気冷却・外気冷却および強制冷却だけでは追いつかず・・・との事ですが、これらの様々な理由により、仮に素晴らしいエンジンが出来たとしても、やはり製品としてよりも、商品として可能性が低かったのだろうと思います。
今回、サッキさんがまとめ、当時の開発エンジン(Code137/当時名称)をベースに最新の技術を駆使して造り直すという偉大な冒険は、あくまでも私の感覚ではありますが、強烈なシリンダーキットを造るということとは趣を別とする、とても熱い何かを感じました。事実私もイタリアから企画の発表当時送られて来た写真を見た限りでは、そうか・・造るのね・・・ぐらいしか考えていなかったのですが(同時期にRBについていろいろ詰めていた経緯もあり、意識していませんでした)、最近のテストやその他の状況を見て、サッキさんに連絡を取ってみた・・といった経緯です。旧い世界選手権レーサーなどが好きな方ならば判りやすい表現となりますが、英国は単気筒の実績を推進し、伊国は多気筒化を歩む・・・のような流れを感じ、ユニークです。そして、彼らのとてもロマンチシズムに満ち溢れた、熱い純粋なハートを感じた訳です。本当の少数生産のスペシャルエンジン!多分に言いすぎの感もありますが、乗り物業界・レース界そして世の中全般に於いて、暗い話題ばかりの毎日の中、颯爽と素晴らしいサウンドを奏でて走るこの「ランブレッタ専用」エンジンは、とても嬉しく感激したニュースでした。これは本当にランブレッタ狂にとっては、とても素晴らしいニュースであり、このような本当に特別なエンジンを自分のマシンに積めるかもしれない!という、そんな心臓の高鳴りを感じるだけでも、サッキさんの大冒険は我々ランブレッタ狂にとって、とても偉大なことを成し遂げたと言えます。
B.構成とスペック
B.構成とスペック
既に英国の代理店であるC社などのサイトをご確認されているかと存じますが、日本へ向けて出荷される場合の構成内容などと併せて以下にまとめます。
1.エンジン Assy(あくまでもダイジェスト/更に詳しい内容は是非お問い合わせ下さい)
最大のメリットは、<現在お持ちのランブレッタのフレームに未加工でボルトオンできます>
-エンジン(クランク)ケースから全て再設計され、既存の4本スタッドボルト固定タイプではなく、固有のものとなります。また同じく非同期爆発の対応クランクは新設計のもので、左右/中央の3ベアリング固定となります。シリンダーは旧イノチェンテイの試作が50X50/2基だったのに対し、54X54/2基に変更され、排気量もUPされております。給気/排気+掃気4ポートのアルミシリンダーであり、スチールスリーブではなく、内面ニカジル処理を施したフルアルミのものとなります。ピストンはメテオール特製のものが構成されます。電装はCDIヴァリトロニックキットの2気筒版(通称ヴァリツイン)となり、12V/100Wの高出力自動進角式となります。現在4速のギアボックスですが、5速も今後想定されています。クラッチは当然のごとく新設計のものであり、用途に応じ4/5/6枚と対応可能な設計思想となっています。併せて強化版の合金クラッチが検討されているところです。(キャブレターは基本構成に付属しません)
2.強化リアハブとワイドサイズホイルリム
-相対的に強度の強いS2モデル用のリムをベースに強靭に再設計したもの。
3.専用エンジンマウントボルト&ナットキット
-エンジン(クランク)ケース自体が別物なので、専用のものが構成されます。
4.左右2キャブをコントロールするスロットルケーブルキット
-タルガツイン250エンジンは左右各シリンダーに一個づつキャブレターが構成されるツインキャブ。
よって、スロットルケーブルは二股に分かれた専用のものになります。
5.専用2in One エグゾーストチャンバーキット
-チャーリーエドモンズさん(Performance Tuning社)専用新設計チャンバーです。
各シリンダーから一本に纏まるタイプです。
6.専用ハイフロータップ&パイプキット
-既存モデルとは全く別エンジンですので、必要容量に見合ったハイフロータップとなります。
7.専用エアフィルターキット
-左右キャブレターに装着されるものです。(写真を参照下さい)
外部からエアを取り込まず、エンジンルーム内に収まります。
C.パフォーマンス
標準構成に付属しないキャブレターですが(インテークマニホールドはエンジンAssyに付属)、デロルト製でテストされ、26/28/30ミリの各サイズが該当キャブレターとされています。28ミリキャブレターでテストされた際のダイノデータですが、28馬力&最大トルク18.92と非常にトルクのあるエンジンです。これは通常の使用に於いて最大のメリットであり、低回転域での使用が多い一般道では絶大なメリットと言えます。ツインエンジン故の使いやすさと質の良さが顕著に現れております。3800回転辺りの低いエリアからパワーが発生してきますので、使いやすい・乗りやすいエンジンと言えます。常に全開を想定した単気筒チューンドエンジンとの大きな差だと思います。(30ミリ以上のキャブレターを使用した場合は30馬力以上の出力をクリアします)
D.修理対応スペアパーツ
サッキさん側で柔軟に対応するとのことです。仮に日本で当方を通じて購入された場合には、もちろん円滑に取り次ぎ調達するよう努めます。このようなスペシャルエンジンで絶対数の少ない生産になるものですから、先方もしっかり管理してくれますので、ご安心下さい。
以上、今回の発表とさせて頂きます。
関心のある方、興味のある方、自分こそは積んでやるぞ!という方、いずれもお気軽にお問い合わせ下さい。可能な限り回答できることは現地と連絡を取りながらお答えしたいと存じます。
グランプリアンリミテッド メールアドレス info@lambrettagrandprix.com
<動画集>
YouTubeにて公開されている映像のウエブリンクを以下に掲示します。
テストマシンは更に相当手が入っていますが、このエンジンの潜在的なポテンシャルをうまく映してあります。ライダーは現在英国選手権で乗りに乗ってるチャーリー・エドモンズさん本人のようですね。素晴らしいライディングにも注目です。
http://www.youtube.com/watch?v=2Z5jTPFtir8
http://www.youtube.com/watch?v=2Z5jTPFtir8